Review


WEB小説の読了記録。
個人的な感想となります。見解が異なる場合があります。順不同。
(作家様へ、URLのご変更や取り下げなどのご依頼がありましたら、お手数ですがご連絡頂けましたら幸いです)



ぼくたちらしく暮らせる まち』蜂賀三月 様(note)
「恋人、けど結婚相手じゃない」をテーマに書かれた短編。
 私自身、結婚とは単なる世間におけるシステムだというドライな考え方をしている人間なので、同性の恋人である二人のぶつかる問題についてはとても疑問にも思い、切なくもなりました。
 何でもカテゴライズしなければならないのは人間の性なのか、人は目に見えやすい証明や形や承認がないと不安になる生き物なのかもしれない。人だけではなく、例えば保険会社ひとつにしても。
 だけど、物語の彼らは言う。証明書がなくても自分達は家族だと。お金以外にも残せるものはあるはずだと。
 涙が止まりませんでした。
 私は同性カップルゆえの葛藤を描かれた作品も好きなのですが、リアルに描かれたこの物語のシーンで、どうにもならない世の中に心が痛み、それでも折り合いを付けながら前に向く二人に心打たれました。こんな愛のかたちもあるという事を、忘れないでいたいと思います。
(2021/6/6・2021/10/4改題されたため修正)


美しき家』雨宮吾子 様(ステキブンゲイ)
 現実でも繰り返し報道される、いじめの場面から始まった今作、この手の問題がすぐに明るみに出ない理由に、いじめられた被害者がいじめられた事を認めたくないという、若さゆえのプライドがあるからだと改めて気づかされました。
 そして狭い教室内で、ターゲットが変わっていく様子がとてもリアルでした。意外に世間の出来事は自分の関与しない場所で動いているものですが、高校生という若さではそれに気づけず、すぐに自分に結び付けたり、自責に駆られたりしてしまう。外側と内側のギャップがタイトルにも表れています。彼らも大人になるにつれて、儚い友情や避けられない別れを受け入れる日が来るのだろうか。いつの日か手放した感情を、思い返させられた作品でした。
(2021/1/24)


ライチ』蜂賀三月 様(monogatary.com)
 ある家族の形のお話。何気なく繰り返される朝の挨拶が途切れる事に気づく「ライチ」。突然襲った状況に、言葉を発する事のできない「ライチ」の感情が、文章に表れていてとても切ないです。「ライチ」を通して伝わるお父さんとお母さんの温かさに、家族の幸せを祈ります。命には限りがあるけれど、一日でも多くの「おはよう」が繰り返されますように。
(2021/1/24)


ひと皮むければ』/『らしくない』いそね 様(pixiv)
 アパレル業界のお話。流行り廃りの激しく、またニーズに合わせながらのセンスを問われる業界の過酷さが、アパレルから遠く離れた場所にいる私にも響いてくるお話でした。
 どの仕事でも理想と現実が剥離していて、働き手はその妥協を探している。でも妥協したら「私のデザインを破壊する」、デザイナーの葛藤はきっと会社人なら身に覚えがあるはず。
 続編では、デザイナーの後輩視点に切り替わり、上記の非情さに追い打ちをかけている。憧れの学生時代から姿を変えてしまったデザイナーに対して、追い打ちと共にかけた後輩の言葉は、デザイナーの救いとなるのか。
 働くという事の苦しさと面白さに、思わずうなずいてしまう作品でした。
(2021/1/24)


絶妙にわたし好み』いそね 様(pixiv)
最近のトイレは綺麗だ、という事を思い出した。某百貨店の女子トイレは、それはそれは女子心をくすぐる夢のような空間で、私にとっては場違いを覚えずにはいられない場所だ。
それはさておき、ある家庭のトイレのお話である。トイレが汚いというのは前々世代までの話であり、デパートと同様、最近の家のトイレも快適な空間でできている。
そんなイメージの浮かぶトイレの一角に物が増え続けている今作には、くすっとこみ上げられる笑いもあり、どこか身近に思える情景がある。思春期を過ごす弟からの、言葉以外のコミュニケーションの方法は、素直になれない年相応の気持ちが混ざっていて、微笑ましく思うのは第三者だからだろう。きっと当事者であれば、主人公同様振り回されるに違いない。
そして今作の見どころとしては、弟のおもてなしの理由と隠れた真実で締められるオチである。この家族の平和を私は願いたい。
(それにしてもトイレの床ってどうしてあんなに髪の毛が落ちているのだろうか…。共感しかない)
(2020/12/11)



公開終了された作品

残念ながら現在公開されていない作品ですが、こちらに感想を残します。
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■『三の道筋』 蒲場六月 様(ステキブンゲイ)
他人との交流をきっかけに、自分自身や他人を深く知っていくお話です。
物語の冒頭はどこか漠然としている主人公の視界が、居酒屋で知り合った三人と関わっていくことで、輪郭を取り戻していくような感覚で、読み手にとってもそれがクリアに見えたようでした。登場人物、悪人ではなくとも、善人でもない。どんな人間でも多面性をもつ。そんな当たり前の事を、読み手に景色を映しながら示してくれた作品でした。
(2020/10/31)


■『溺れる奇麗な白魚へ』宮村祥 様(NOVEL DAYS)
NOVEL DAYS 2000字文学賞「恋愛小説」優秀作品。
同棲をしている恋人同士でも、まだ知らない一面がある。雨に沈むアパートの一室のベランダに佇む彼女の姿は、主人公にとっておののくほどのものだったはずなのに、恋をし直した。ある意味ロマンティックとは対極の景色の中で、感情は理屈に沿わない。形見えなくても「五感は互いに影響し合っている」を体現したような、二人の恋のお話でした。
(2020/10/31)


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